半兵衛

処刑の丘の半兵衛のレビュー・感想・評価

処刑の丘(1976年製作の映画)
4.5
戦争の最中敵に捕まり捕虜になった人間の心情を作中徹底的に掘り下げ、その上主人公二人は冒頭から最後まで過酷な状況にいるため捕まった彼らと同じ状況に陥ったかのような感情になり見終わったあと徒労感に襲われてしまった。そういった意味ではまた見たいとは思わないが、凄まじい傑作だと思う。

この作品で特筆すべきは役者の顔とそのクローズアップの使用である、長い戦場生活で疲弊した顔つきや死ぬ間際の呆然とした表情など芝居とは思えないくらい真に迫っていて本当に戦場にいるのではと錯覚するほどリアルな芝居と相まって圧倒される。そしてこの映画はクローズアップをよく使うが、かといって頼りすぎることはなく映画の生理に従いタイミングよく使いその顔が映画の状況を雄弁に伝えるため自然に映画の世界に入り込んで行く。後半の死を見て心揺さぶられる子供への芝居なんかどうやって演出したんだと感心するし、何より苦難や拷問の果てにキリストのような表情になる主人公の兵士の顔!

舞台となる雪に覆われた大地が行き場のない主人公たちの逼迫した心情を浮き彫りにする、あと大雪を掻き分けて進むことがどんなに大変かを詳細に描いているところが東北育ちの私には好印象。

ラストも仲間を裏切り生き残った人物の顔で締め括り、開いている門のショットも相まって生き延びたが仲間のところへも行けずどうしようもない心情をダイレクトに伝え胸に迫るものがある。
半兵衛

半兵衛