ミシンそば

処刑の丘のミシンそばのレビュー・感想・評価

処刑の丘(1976年製作の映画)
4.0
無慈悲、無情。
そう言った単語で片付けるにはあまりにも“人間の本質”が過ぎるドス黒さの片鱗を味わわされる劇ヤバも劇ヤバな映画である。

残念ながら交通事故で夭折してしまったラリーサ・シュピチコ監督の、戦争に対する一歩も二歩も引いた俯瞰視は、オープニングクレジットの時点で明白だし、あたり一面気が狂いそうなほど白一色の凍てつく荒野の情景もまた、美しいは美しいが命を刈り取る殺意に満ちていた。
ここら辺は、Blu-rayで観て正解だった。

この兵士二人が捕まるまでは少し退屈な場面もあるが、一人の咳がもとでバレて捕まってからの展開はあまりにもエグすぎる。
拷問の壮絶さはもちろんそうだが、尋問官ポルトノフの語る「人間」観もまた、キャラだけでなく観る者の心までも刺しに来る。
結末も当然救いは絶無で、丹念に心を砕きに来るなぁ…と染々。

観念的な価値観に従って死ぬか、恥を晒して生きるか、その二択しか選べない環境では、観念のようなものが心を壊さないようにするための最終防衛ラインになるんだろうなあ。
観終わってしばらくしてから、ジャブのように効いてくる。