1980年代後半を時代背景にしているところをみると、韓国の同時代を背景にした「チング」という映画が思い浮かぶ。
どちらも極道社会の変化と、それに巻き込まれる青年達の物語になっていて、この時期、この2つの国では軍事政権の終焉と民主化が進み、この民主化運動と、民主化そのものが極道社会にも大きな影響を与えたのだろう。
思えば日清戦争後、他国の統治が半世紀続き、終わったと思ったら大陸の干渉に軍事政権。だからやがて民主化が進むのは必然ではあるが、そういう時代の変わり目にはいつも、レールから振り落とされる「旧態依然」がある。そしてそれは当然ながら極道社会にもあったということ。
そういった現実から逃げるように思い焦がれ続けた主人公の「日本の桜が見たい」という思いは、「犬の代わりに豚が来た」(嫌いな言葉だけど)と錯覚させてしまう、ただただやりきれない時代だったからこその、かりそめの憧憬だったのだろう。
チングの台湾版として見るのも良いけど、
台湾独自の時代背景が十分に見てとれた。
個人的なランキングの上位に入るくらい良い映画だった。