ユック

復活の日のユックのネタバレレビュー・内容・結末

復活の日(1980年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

何やら紹介読むとSFらしく、ポストアポカリプスものっぽいので、面白そうじゃんと思って見てみた。

オープニングで角川映画と知る。

あちゃー邦画だ。邦画SFでしかも80年作とか地雷かも…

とか思いながらも、見ていると、もうのっけから人類ホボ全滅してるというw
これには仰け反り(好印象)

ポストアポカリプスものって言っても色々あるけど、ここまで最初から全世界的にほぼ人類は滅亡しておりますって始まるのはナカナカ珍しいのでは?

潜水艦から望遠で東京の街を拡大して見ると荒廃してて死体がその辺に転げてる…

MM-88なる細菌兵器が散布されてしまったらしく、人類はほぼ全滅してしまったようなのだ。

ほぼって言うのは、超低温では活動を休止する細菌なので、南極の基地の人と潜水艦の人は生き残っているという事。

じゃあ南極の人の話になるのかというと、これが意外とスケールデカく時間を掛けて、どのように世界中が細菌兵器によって終末(実は第一段階目)を迎えるかを描いてる。

冒頭はどうやらこの第一終末のワンシーンなのね。

一応背景としては東西冷戦があって、アメリカとソ連がお互いに何かあったら核ミサイルを世界の主要な拠点にブチかます防衛システムを設けてある事、既にお互いがそんな状態だからさらに抜きん出ようとアメリカが細菌兵器の元になる開発をしてたらイギリスのスパイに持ってかれてそれが事故ってイタリアのアルプス山脈に巻かれてしまって、このアポカリプスが始まる。

なんかこの辺の話とか、恐らくアメリカのホワイトハウスで対策考えてるところとか、日本で主人公の吉住(草刈正雄が演じる。クソイケメン外人にしか見えん!)の婚約者だった看護士を中心としたドンドン日本が終末に向かうプロセスとかをすげぇ丁寧に時間割いて描いてて、正直前半は退屈です。

で、もう世界は終わりです、後は南極の皆さん頑張ってくださいとアメリカの大統領から連絡が来て、こっからは南極基地の自治の話になっていく。

南極…ウィルス…SF…っていうと遊星からの物体Xを思い出しましたけど(遊星からの物体Xが1982作で本作は1980作だから早いのね!)、この作品ではウィルスは南極で猛威を振るわないです。でも、極限状態で発狂しちゃう人はいました。ポーランドだったかな?の部隊と何か勝手に出てった永島敏行(僕の中ではガメラ2の隊長!)が次に出てくるシーンは遺影ってヤツ。この辺の話は必要だったのかね?

南極の自治の話で、男性が300人くらい?対して女性が8人とかいう(Wow!僕の大学時代みたいだ!)状態では女性は子供の為に多数の男とセックスしなければならない事を受け入れてもらうしかないみたいな議論をクソ真面目にしてたのが超エキサイティンでしたね。ここは印象的だし偉いなぁと。後に、クリスマス?パーティで主人公吉住(草刈正雄)がどうやら密かに想ってる女性に若造がクリスマスカード渡して、どうやらそれがセックスOK!の証明らしいのが描かれてて面白い。外で悔しくてかマリア像を雪だるまで作って見せつけてくる草刈正雄可愛い。

この草刈正雄が想ってる女性(オリビィア・ハッセーだって。超美人…)はポーランド?の基地で発狂殺し合いの現場から助けらた妊婦で直後に南極自治政府みたいんが発足する所で子供を生みます。やっぱこういう状態でも(だからこそ)子供が生まれるのは救いのように描かれていたのが印象的。

これで思い出すのが同じくポストアポカリプス映画children of men(トゥモローワールド)ですね。あの作品は子供が突然生まれなくなってしまうというSF的寓話だったけれど、内戦状態の中でも赤ちゃんの鳴き声が聞こえるとみんな銃を撃つのを止めるというあのファキン名シーン!…それに比べると本作は戦争とか戦闘シーンは皆無なのに圧倒的全滅感が凄いですね。

さらにこの後、どうやら草刈正雄(もう面倒なので草刈正雄)が地震に詳しい地質学者でアメリカでデカイ地震が起こりそうと言い出し、それによってアメリカの例の防衛システムが発動してソ連以下に核ミサイルが飛んでいき、それを受けて今度はソ連の防衛システムが発動して、ちゃっかり目標に南極基地も入ってるとのことで大変。

何とか既にレディ状態になってる防衛システムを止めにワシントンに潜水艦で向かう草刈正雄とアメリカの軍人さん。行く前に効くか分からんけどと研究者が作ったワクチンを貰ってたのを打って上陸。するとホワイトハウスに乗り込むも予震が発生してしまい……(ここでアメリカ軍人さんは落ちます)どうなる草刈正雄!そして世界の運命は!

結果、間に合わず、目の前で発動。2回目のアポカリプス。
これには二度目の仰け反り(超印象)

そんなのアリかよ!って思ったけど、まだ続きがある。

その後、ほぼ廃人のようになりながらもワクチンが効いてて生きてる草刈正雄。ただただ、誰も生きていない荒野(マッドマックス顔負け!)を彷徨い続けている。
どうやら、南に向かっているらしい。
南には南極から逃げた皆んなが生きているかもしれないと信じてるんですねぇ。途中マチュピチュらしきところの屍と無言の会話シーンで分かる。屍にもみんな死んだよ諦めなと諭される正雄。
(どうやらマチュピチュで撮影したみたい…南極もガチだし潜水艦もガチらしい…)

それでも南を目指す正雄は、なんと南極から逃げて生き延びていた女子供を中心とした人々と再会!奇跡だ!

ここで終了。
何か終わりは無理やりなハッピーエンドな感じでよく分かりませんが。長大超大作でありました。

制作は角川春樹、監督は深作欣二、原作は小松左京。

なるほど日本発のSF超大作を作ろうとした気概は十二分に伝わりました。メッチャお金掛かってそうだし、角川なのに日本人とか即刻退場してるのとかも凄い思い切りだなぁと(草刈正雄は外人枠認定)。なによりポストアポカリプスものでここまで思いっきり人類を可能性も含めて滅してるのは凄い。
尺については2時間半の作品なのに3時間くらい見てる気分だったので、もうちょいコンパクトにしてもらった方が良かったかなぁ。

しかし、特撮・アニメ位でしか日本のSFを摂取して来なかった身としてはやっぱ日本のSF小説も読まなきゃなぁとか思った次第。

この小松左京の作品より後にあのマイケル・クライトンのアンドロメダ病原体が発表されてる(東宝→20世紀FOX→クライトンでアイディアが流れたとの噂)とか聞くとWOWですね。

角川映画はこの作品をキッカケに(ヒットはしたみたいだけど痛手があったのでしょう)超大作路線を止めてアイドル路線になってったらしいのでSF好きとしては邦画実写SFの墓標みたいな作品ですね!(もちろん特撮は死んでませんけどね!)

連想作品として、日本沈没と地球最後の男は見たり読んだりしないとなぁ。