矢嶋

復活の日の矢嶋のネタバレレビュー・内容・結末

復活の日(1980年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

見れば予算が潤沢な大作であることはすぐに分かる。南極をはじめとした各国のロケ、実物の潜水艦を使った撮影は素直に見応えがある。

パニックの描写が容赦なく、かなり力が入っている。暴動のシーンでは、最近見かけなくなった服に火がつくスタント。医療現場が憔悴していき、死体の山が築かれる。やがて、処理しきれない死体を積み上げて焼却していくことになる。そして、ウイルスそのものではなく、精神的な疲弊や恐怖のために死者が出ていく。そうして、街には骨と化した死体が溢れるようになるー
離れた南極から状況がどんどん悪化していく様を聞くのは、すごい絶望感だ。

理性的でいられる人もいれば、そうでない人もいる。どちらについても、演技・演出両面で迫力あるドラマを描けていたように思う。
そして、どう考えてもARS阻止に成功してワクチン開発すれば綺麗に終わるのに、更にダメ押しするのがすごい。

マリトの話をやる上でもかえって邪魔だし、吉住と則子の話は正直ちょっと余計に思う。日本沈没でもそうなのだが、主軸の滅亡だけで話がかなりあるので、そこに主人公の恋愛要素をねじ込んでも消化しきれていないように思える。

ラストシーンは印象的で、流れとしても納得できるが、視点を吉住か仲間のどちらかに絞った方が収まりがいいだろう。そして、吉住がさまよい続けて仲間と再会か、細々と生き残った仲間たちのもとに彼が帰ってくるか、いずれにせよそこで終えた方がいい。いかにも感動の再会という感じでくどい。

これは内容の出来とは違うので言いたくないが、スタッフを見る前から強調の傍点が異常に多い字幕に辟易し、誰が担当したのかすぐ分かった。本人は後に「透明な字幕」が良いと語っているが、そのスタンスとは一致しないだろう。

総合的には、潤沢な予算からくる迫力ある画や凄まじい絶望感の演出により、長尺でも飽きずに見られる作品であったと思う。
矢嶋

矢嶋