20世紀初頭の大量生産時代突入への皮肉で幕を開ける本作は、レースで勝つには問題だらけの3人＋1頭が偶然出逢うことによって本筋が始まる。実在の名馬を主軸にしたサクセスストーリーだと思ったら、時代の潮流のため何かを失った人々の七転八倒劇だった。それぞれ割と勝手に生きていながらお互い教わるところがあるという距離感が良い。彼らの境遇を考えるとハワードがレッドに何気無くson(君)、と呼びかけるのが…。
説明不足な点も多いのだが、大恐慌という重い社会情勢を絡めながら笑いどころもちゃんとある。特にクリス・クーパーの飄々とした存在感が印象的。派手さはないが馬の美しさやレースの駆け引きを堪能できる良作。
