DaiOnojima

シービスケットのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

シービスケット(2003年製作の映画)
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なぜか急に見たくなり、競馬映画をふたつ鑑賞。どちらも実在のアメリカの競走馬をモデルにしたもの

『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』(2010年 ランダル・ウォレス監督)
1960年代末に25年ぶりのアメリカ三冠馬になった名馬セクレタリアトを巡る物語。三冠すべてをレコード勝ち、三冠目のベルモントステークスでは2着に31馬身差(!)をつけて勝ったという米国史上最強とも言われる伝説のサラブレッド。デビューから引退までこれという挫折もなくただただ「強かった」というだけの馬なので、どうしてもドラマが生まれにくい。なので周囲にいる人間でドラマを作るしかないんだけど、それも結局人間の欲望によって活かされ走らされる経済動物としてのセクレタリアト、という以上の話にはなりにくく、なんとかお話を盛り上げようとしても無理がある感じだった。60年代末のアメリカという世相を絡めようとしてもちょっと難しい。次の作品を見たら、もうディテールを忘れてしまうような、そんな印象希薄な映画。主演のダイアン・レインは良かった。

『シービスケット』(2003年 ゲイリー・ロス監督)
こちらは1930年代の競走馬シービスケットをモデルにしたもの。大恐慌を時代背景に、馬主、調教師、騎手と、それぞれ挫折経験があり傷を抱えた男たちがシービスケットと共に戦い勝利することで再生を果たすという、いかにもアメリカ映画らしい作品。シービスケット自身もデビュー当時全然勝てなかったり、故障からの劇的な復活があったり浮き沈みのあった馬なので、馬の物語と人間の物語が劇的につながり絡み合って、いい具合に盛り上げる。そこに人間の欲望はもちろん絡んでくるが、それだけじゃない登場人物の「動機」があるからよりドラマティックなのだ。大感動とまではいかなかったが、こういう題材はアメリカ映画の一番得意とするところで、いい意味で無難で安定した作品だった。今みたいに競馬のレース体系が全く整備されてない時代の話なので、三冠馬ウォーアドミラルとのマッチレースのエピソードなど、まるで剣豪同士の果たし合いみたいで面白い。

 日本でサラブレッドをテーマにした映画というと『優駿』だが、あれは架空の馬が主人公。実在の馬をテーマにするならやっぱりハイセイコーとかオグリキャップとかトウカイテイオーでしょうか。ディープインパクトやシンボリルドルフは強すぎてドラマが希薄だし、テンポイントやサイレンススズカだと悲劇になっちゃうもんね。日本で作るとなると、もう少し馬自体にフォーカスして、擬人化するとまではいかないまでも、馬中心のお話になって、大衆のその馬への思い入れとか、人間と馬の繋がりみたいなものを強調する方向に行くと思う。アメリカ映画は良くも悪くも馬は素材に過ぎなくて、あくまでも描くのは人間、という違いがある気がする。
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