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螢川のkuuのレビュー・感想・評価

螢川(1987年製作の映画)
3.0
『螢川』
製作年 1987年。上映時間 115分。
昭和三十年代の富山県を舞台に少年の性の目ざめと人間的成長を描く。
宮本輝の芥川賞を受賞した同名小説を須川栄三と『チェッカーズ SONG FOR U・S・A』の中岡京平が共同で脚本化、監督は『日本人のへそ』の須川栄三、撮影は『海に降る雪』の姫田真佐久がそれぞれ担当。

昭和30年代の富山県。
幼馴染への秘めた初恋、そして高校受験を控え、悶々とした日々を過ごしていた少年・竜夫。
彼は父親から『4月に大雪が降った年の初夏は蛍の大群が発生する』という云い伝えを聞かされ。。。

『泥の河』『道頓堀川』と並ぶ宮本輝の”川”3部作の同名小説を映画化。
以前、宮本輝は良く読んだ。
大河小説『流転の海』シリーズなんかかなり次作を待ちわびながら読んだものだ。
ちなみに映画『流転の海』(1990年宮本輝原作)も今作品監督須川栄三が撮ってます。
もちろん、今作品の原作も既読ですが、記憶の物語と改めて映像化で見ると何か違和感があった。
宮本輝の風がいまいち感じられなかったなぁ。
ラストの蛍群も評価たかいが、
誰だ!誰だ!誰だ~空のかなたに踊る影
緑い蛍光塗料群描いたのは?
なんて思ったら、そのクライマックスシーンで特殊効果を担当したんが、円谷英二の最後の弟子で光学合成の匠、川北紘一だそうだ。
嗚呼、怪獣が出てきそうな描写はそれでなんやなぁと納得。
最後の蛍がいかにリアルで幻想的かというのが、宮本輝の今作品ポイントと云えるが、蛍さんが
オーラのよう。
何か面白いようで笑えないのは、蛍に包まれて抱き合って、全身を透過し光に包まれて。。。
ファンタジーなんか笑いを求めとんのか。
この時代なら懸命にやったんやろけどリアルさからはほど遠かった。
むしろ土臭くに再現してほしかった。
それだけでかなり減点かな。
原作原点をしってるだけに。
今作品の性欲が混ざり始めた子供の気持ちと、大人の業に支配されずにはいられない大人の純愛を対比させるというテーマは、宮本輝の今作品同年に発表してる『泥の河』と同じやけど、今作品は比較にならないほど魅力がない。
そちらの実写化やし、なおさら魅力は欠ける。
毒舌をも一つお見舞いするなら、オリジナルとは比較にならないほど感情移入ができない。
原作の流れをそのままスクリーンに移しただけで、カルマをほのめかしていないように思う。
ドラマそのものが『ギルバート・グレイプ』のようやった。
身内の逃れられない重力に囚われていた男の死が、彼を解放する。
せやし、何かを成し遂げるための物語ではない。このエピソードに生きる人間の心の揺らぎを描いた物語なんやろけど、それを抜きにして語られているような気がしてならない。
今作品の主人公の水島竜夫(坂詰貴之)の家庭は、かなり複雑で、戦後、父・水島重竜(三國連太郎)は事業を成功させ、町民から『仁王竜』と呼ばれていた。
母の千代(十朱幸代久しぶりに見た)は、かつて芸者として成功し、父がまだ栄えていた頃に主人公と結婚した。
第一子を待ちわびていた重竜は、無実の妻春枝を捨て、千代と再婚した。
そこには、14歳の主人公には到底理解できない人間の業があったんやろう。
この物語やと、主人公が追い求める強い目的というものが存在しない、若しくは弱い。
強いて書くなら、幼なじみの辻沢英子(沢田玉恵)への想いを遂げたいちゅうことやけど、それが明確に表面化することはない。
変わったのは、竜夫を取り巻く環境で、借金を背負った父親が病に倒れ、借金が膨れ上がる。
それでも英子への思いは募り続ける。
そんな中、友人と父親の死が訪れる。
父親の死によって、英子は借金から解放される。おそらく『相続放棄』の手続きは完了したんやろう。
大阪にいる千代の兄から、大阪に来て仕事を手伝ってほしいと頼まれ、重竜の前妻・春枝もやってきて、竜雄に援助を申し出る。
その夏、重竜の知人である銀蔵は、竜雄、英子、千代を連れて、上流の蛍を見に行った。。。
んん~
原作抜きでの単体作品として観たなら、悪くはなかったんかもしれないが、宮本輝は殊の外好きな作家故にメチャクチャよい作品とは云いがたいかな。
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