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血を吸う薔薇のhorahukiのレビュー・感想・評価

血を吸う薔薇(1974年製作の映画)
3.9
ぼくのミカ 215歳の少女

赴任当日に「君が次期学長だから」と言われて困惑しつつも、次の日には速攻で女子生徒を口説いて良い感じになる下半身的手際の良さを見せつけるあたりにこの学校の行末が反映されてるな〜と感じて楽しい気持ちになる。星明学園って名前だけど、こいつが学長になったら漢字が一字変わりそうやね!

本作は山本監督の血を吸うシリーズ最終作。前作と同様で吸血鬼役は岸田森さん。ほぼ台詞無しだった前作に対して、今回は威厳ある声色で学長としての大物感を出しつつも、吸血鬼化した途端にウガーウガーしか言わなくなるのが笑える🤣人間→吸血鬼は進化じゃなくて退化だってのが良くわかるね。吸血鬼になってやることと言えば、ウガーの連呼か女の血をチューチューするかのどっちか。動物やん。

しかも、吸血鬼といえば首筋チューチューだけど、本作の岸田森さんはおっぱいからチューチューするという改変がされてて、そういうとこもエロ方面に特化してる。学園も女子校だし、みんな実家に帰ってしまった休暇中に女子生徒3人と学校に居残ることになるのが新任教師の主人公とか、どう考えてもエロい展開にしかなり得ないという。

吸血鬼化を性欲の権化になることとみなすことで、欲望に囚われた者の存在自体を矮小化させ
、更には「死」に囚われた吸血鬼こそが最も「死」を恐れて逃避し続ける存在であることからも、威厳とは程遠い「矮小化」の意図を浮かび上がらせる。その平常時と吸血鬼化時の二面性は、文字通り「死」が支配する星明学園の華やかさと退廃的ゴシックホラームードにも現れ、迎えられる霊柩車イメージと、一見長閑な中にも荒野のような荒れ果てた空気感の同居を何気ない風景から切り取る映像センスも素晴らしい。

異国から流れ着いた外国人なり異教徒なりへの弾圧を背景にしき、そこからの復讐としての吸血鬼、そして皮を被り内側からシステムを塗り替えていく価値観的侵略は『ボディスナッチャー』のようでもある。ただ、本作はあちらのような全体に向けた広がりを見せるのではなく、復讐が向かう先としての悲劇と贖罪、そして200年という時を超えた愛の物語として幕を閉じるのが悲しい余韻を残す。前作に続きこれも良作!!
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