たく

しのび逢いのたくのレビュー・感想・評価

しのび逢い(1954年製作の映画)
3.5
自分の数々の女性遍歴を意中の女性に語り聞かせるプレイボーイの滑稽さを描く、ルネ・クレマン監督1954年作品。原題はシンプルに“Monsieur Ripois”で、邦題にある「しのび逢い」のしっとりした語感は本作の内容からするとちょっとそぐわない感じがする。ジェラール・フィリップが滑稽ながらも哀れな役を演じてて、なかなか味があった。

妻のキャサリンと離婚調停中であるリポアには現在の意中の女性がいて、彼女への愛を示すために自分の過去の女性遍歴を正直に語っていく。「正直」といっても彼は手に負えないプレイボーイで、「信頼できない語り手」と言われるとおり本当のことを言ってるのか分からないんだけど。彼が高圧的な女上司の下で働いてた過去の姿にはまだ遊び人の雰囲気はなく、この上司にリポアが取り入って恋人関係となってから、彼女に満足できない彼が身持ちの固いノラに言い寄り、娼婦のマルセルのヒモとなり‥という感じで次々と女性に手を出していく。

リポアが特定の女性に満足できないのはイギリスという異国にいる孤独から来てるのか、人の愛し方を知らないからなのか。いずれにしても彼が本当に愛する女性と公言するパトリシアに過去を告白したのは時すでに遅しって感じで、往生際の悪い彼が天罰をくらう感じのラストが滑稽の極みだった(マックス・オフュルスの「快楽」のラストに似てる)。本作は主要キャストでジェラール・フィリップ以外に男性が出てこなくて、捉え方によっては単なるハーレム物にも思える。
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