ベビーパウダー山崎

冬の子供のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

冬の子供(1988年製作の映画)
3.0
妊娠出産も反撥していた父親の死も元カノの自宅に勝手に侵入して赤ん坊と対面するくだりも銃で撃ち殺す終盤も適当だよなあ。作り手として一つ一つともっと真剣に向き合えよとは思うけど、それなりに大問題な出来事も長い時の過程でしかないと割り切る姿勢を悪だと言っているわけではなく、それならそれで淡々と人物(関係性)の始まりと終わりを描けば良いのに、女性にはわざわざ涙させたりしてドラマを演出させたがる、衝撃的なくだりなど場当たりでしかないのに、さも感情で人はつながっている(もしくは断絶している)とでも訴えたがる途方もないダサさ、いま見直すと恥ずかしいだろアサイヤス。遠く離れたニッポンで今さら見られているの一周回って興奮するだろアサイヤス。金曜夜にデカいスクリーンで埋もれたフランス映画を見るのは悪くなかったよアサイヤス。
建築家と教師と芸術家と役者、立派な肩書を持つ四人の男女の言い訳がましい恋愛ドラマ。AとB→BとC→CとDのように位置関係を紹介していく冒頭の流れは引き込まれた。アサイヤスが頭でっかちに創り出したキャラクターと安い言動が不揃いで、フランスを舞台に洒落た若者が演じているから化かされるが、川崎とか足立区でふらふらしている男女を中心にしたケータイ小説程度の物語だと思えば幼稚な男性も馬鹿げた行動しかとらない女性もしっくりとくる。
親密な距離もしくは社会への甘え、その弱さを美学だとして映すアサイヤス映画。ラストで「人は変わる」とか平気で言わせてしまう映画を俺は一ミリも信用していない。的確に光と闇を捉えるキャメラ、編集と音楽は良い、というかその組み合わせがアサイヤスの散り散りばらばらな表現を辛うじて「映画」にしている。