Ricola

水の中のつぼみのRicolaのレビュー・感想・評価

水の中のつぼみ(2007年製作の映画)
3.6
まだ幼さ残る主人公のマリー。彼女が恋をしたのは年上のフロリアーヌ。マリーの心を揺さぶる彼女は、小悪魔なのか…。


マリーは見つめることしかできない。
男の人に呼び出されるフロリアーヌを、男の人とキスをしているフロリアーヌを、ただ見ることしかできない。
マリーが彼女の近くにいけるのは、友人としての距離を保っていることが前提なのである。

さらに、フロリアーヌが男性といるときには近づけないのだ。フロリアーヌがマリーを寄せ付けない雰囲気を纏っているが、マリーの視線は常に彼女に向けられている。
また、フロリアーヌを直接見ることを妨げられることもある。そのときは彼女が男性に誘われたときや密会しているときである。マリーだけでなく、この映画を観ている我々も彼女が本当は何をしているのかわからない。フロリアーヌが何を考えているのかわからないからこそ、彼女は誤解を受け続けるが、マリーだけは、フロリアーヌとの心的距離を徐々に縮めていく。そのため、マリーは彼女を男性から引き離すように動くようにもなるのだ。
すると、マリーはフロリアーヌから手を触れられたり手を繋がれるなど、身体的距離を彼女のほうから近づけられる。
彼女が秘密をマリーに明かした日の夜、お泊まりをして天井を一緒に見つめているときに指を少し触れてきてもマリーはそれとなく避ける。なぜなら彼女のマリーへの気持ちがマリーの彼女へのそれとは違うと、マリーはわかってるから。
ただ、マリーから手を離そうとしない瞬間が訪れる。

親友のような関係にまで発展しても、マリーとの境界線はまだ存在する。それはお互いの思いの違いゆえなのだと、マリーがあえてフロリアーヌを避けるという行動からもわかる。でもマリーはフロリアーヌから目をはなせないのだ。

マリーの片想いの複雑な思いが、彼女の視線や伸び縮みするふたりの距離に表れていた。思春期ならではの焦燥感と恋する相手への切なさと束の間の幸せに、胸が締め付けられた。
Ricola

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