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キスより簡単のtakのレビュー・感想・評価

キスより簡単(1989年製作の映画)
3.4
早瀬優香子は、当時お気に入りだったんです。代表曲「サルトルで眠れない」「硝子のレプリカント」「セシルはセシル」は大好きだったし、日向敏文、矢野顕子、佐藤隆が楽曲提供した2枚目のアルバム「amino co de ji」は特に愛聴盤だった。アンニュイな女声シンガーは、あの当時なかなかいないタイプだったし。出演してた昼ドラ「華の嵐」もちょくちょく見てた。そして若松孝二監督作に主演したのが本作。彼女にしか出せない雰囲気が素敵。

主人公は、母は同じだが父親が違う四姉妹の三女まあこ。奔放だった母親の3人のボーイフレンドのうち、誰が本当の父親かわからない。まあこ自身も多くのボーイフレンドがいるが、そのうち同じ大学に通う鈴也は実は同じ父親かもしれない。そんな恋愛遍歴の中で、3人の一人であるロクさんに惹かれている自分に気づく。

原作や国生さゆりのテレビドラマ版は知らないのだが、80年代の作品だし性にあっけらかんとしたライトタッチなお話なんだろうな。でも若松孝二監督によるこの映画版は違う。前半はまあこの恋愛模様が描かれるが、後半は一転してロクさん中心に中年男の美学めいた話がこれでもかと語られる。レンタルビデオ借りて初めて観た時は、へえっ?と呆気にとられたのを覚えている。早瀬優香子(の裸)目当てで見始めたのに、徹底的に中年男のカッコいいイメージを植え付けられるという、全体的にはまとまりのない映画鑑賞となったのだが、それでもなんかこの映画憎めない。再び配信で観てしまった次第。

ロクさんが友達のライブにまあこを誘う場面。「人間の証明」のテーマ曲で有名なジョー山中が登場。松田優作も歌った名曲「戦い続ける男達へ」がなんとフルコーラス流れる。この映画に求めていたものとは全然違うのだけど、こんないい曲に出会えたのは大収穫。これが歌える渋い大人になりたいと、今でも思っておりまする。
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