とら

東京物語のとらのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
大名作と言われる所以を、見せつけられ、刺さってしまいました。

ずっと観たかった作品だったのですが、
タイミングが合わずなかなか観れず、
観たい欲求が溜まりまたまっての鑑賞。

これから何回も観返す作品だと感じたので、今回はちょっと細かくレビューしてみます。

【ストーリー】
尾道から東京にやってきた老夫婦が、子供や孫に会いに行くも、日々の生活や仕事に追われて相手をしてくれない。
しかし、8年前に戦死した次男の妻、紀子は優しく夫婦を迎える。
熱海に追いやられ、尾道に帰る夫婦だったが、母親のとみは体調を崩し、危篤状態となってしまう。
尾道に集まる子供たちであったが、母は亡くなる。

すぐに東京に帰る子供たち。
忙しいところありがとうと言う、父。
冷徹な親子関係に寂しがる末っ子。

そんな中、紀子は父に戦死した次男を思い出さない日すらあることを謝るも、父は優しい人だと紀子に、母の形見の時計を預ける。

       【画面】
小津調と言われる、ロー・ポジションから
カメラを固定して、どこからか現れる人物をあおりで撮る撮影方法を使用し、会話の中で人物のアップのカットはアイ・レベルで撮影されている。
構図にこだわりを持っている。常に奥行きのある画面で障子で奥行きを表現している場面が多い。

【感想】
シンプルなストーリーですが重みがあり、映画世界が緻密に構成されているのを感じました。家族愛、親孝行を深く考えさせられるストーリーでした。
最後、紀子の告白は、忙しく両親の相手をしてあげられない子供も救い、両親も救い、現代に生きる私も救われた気がします。

市民ケーンのディープフォーカスのような
奥行きのある画面がすごく映えていました。
40年代のサイレント映画で鍛え上げられた撮影方法、画面の効果に音が加わると、それは大きな力を生み出しますよね。

流石、50年代の作品。

俳優さんの抑えた演技も素晴らしく、笠智衆さんの優しく包み込むような父親、東山千栄子さんの少し寂しげな表情、杉村春子さん、山村聰さんの冷徹な子供、

そして圧倒的な原節子。

素晴らしいと思います。

海外からの評価も高く、
英誌サイト・アンド・サウンドが10年ごとに発表している歴代名作ランキングでは、評論家が選ぶ部門で3位、映画監督が選ぶ部門では1位を獲得しました。
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