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東京物語のYUIのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.0
伊藤弘了さん著書の「教養としての映画」を読み、早速小津安二郎の作品を鑑賞🎬 今まで50〜70年代の映画ってほぼ見たことが無く白黒映画が合うか不安でしたが、飽きることなく鑑賞できました・・・。

教養としての映画を読んでから見たからか、カットの数々において微細な調整をしている点に目がいった。まずは老夫婦の配置。最初と最後の場面で、お母さんが亡くなりお父さんの後ろがすっぽりと抜けている。そこを京子さんや紀子さんが埋めることはない。お母さんの代わりになるものはいない、というように。
全てのショットにおいて人物が重なることなく丁寧に配置された上でカメラを回しているところに監督の熱意を感じる。あと、役者の目線の動きや環境音の正確さ。
小津調を鑑賞することで、ローポジションでの撮影が「その時代の一家族」と切り取った、よくある風景であることを醸し出す一方で、伝えたい思いを組み込む難しさ。例えば、同じ風景でも最初と最後で物の配置が違ったり、お母さんの遺体を介して紀子さんだけが別サイドにいることで家族との隔たりを表すなど。
煙やうちわを用いる場面が多く、白黒映像の中で風=空気が常にあることを際立たせ、3次元であることを表しているような気がした。また、固定カメラがほとんどの中で老夫婦が娘の家を追い出され上野公園で時間を潰す場面のみカメラが動く。監督はどんな思いでこの場面だけカメラを動かしたのだろう。

必要最低限の会話の中で、お母さんが亡くなった際のお父さんの言葉の重みは心を痛める。お父さんと紀子さんは登場人物の中でも表情変化に富んでいて、この2人は親に対して希薄になる子供に思うところが強かったのだと感じる。ただ、その愚痴を吐露するのはお酒の場だけ。この感情の動きを理解し表現できるのは日本人だけだと思う(笑)

なぜ紀子さんは両親でない2人を気遣うのだろう。私としては、最愛の人を亡くした経験があるからこそ生きているうちに孝行すべきだと誰よりも感じているのだと思った。

寿命68歳や3000円で熱海まで行ける、など、時代を感じた・・。それも一つ昔の映画ならではの特徴かも。

今年は不朽の名作をたくさん見たい🎬
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