話者を正面から真ん中に据えるカットが印象的だった。
本心ではない言葉を話しているときにそのカットが多かった気がする。
どこの家族でもありうる物語。平凡といえば平凡だが、こんな物語を映画として成立させていることがすごい。
子供たちへ会いに、田舎から上京してきた両親。
しかし子供たちは仕事や暮らしに追われ、両親を連れ出す余裕はない。
「世話してやる対象」となった両親は、東京での暮らしのなかに入る余地はない。
無償でなにかを与える・与えられる関係というのは、家族には限界があるようだ。
それぞれが年齢を重ねるごとに、互いの解釈が変わり、関係が変わってしまう。
だから、血のつながりを一つ飛び越えた「息子の妻」という立場や、ご近所さんの方が、いつまでも変わらず世話をし合える関係でいられる。
田舎から出てきた親を描いているものの、東京での暮らしや価値観に移入している。
『東京物語』というタイトル、とてもいい。