明石です

東京物語の明石ですのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
息子や娘の顔を見るために田舎から東京へ出てきた年寄りの両親を、内心少なからず疎ましく思いながらももてなそうと努める息子/娘と、彼らを取り巻く人々の人間ドラマ。大人になり、結婚して家庭を持ち、変わっていく息子娘と、彼らが変わったことを受け入れられない両親、本音と建前が目まぐるしく交錯する感じが心苦しい。どこかで見たことある話だなあと思ったら、そういえばこれ、デニーロ主演の『みんな元気』のオリジナルでしたね(こんな日本の宝のような作品を、洋画を通して知るというのもナンですが笑)。

風景をメインに据えたロングショットと、カメラの前に対象物を置いて撮る固有の技法、そしてイマジナリーラインをあえて無視した「180度ルール破り」と呼ばれる、人物を真正面から映すクロースアップを多用した小津流のカメラワーク。いちど遠巻きに人物を写しておけば、あとはどんな視点で捉えてもOKという自由度の高さはまさしくこの監督の発明ですね。ショットを見る楽しみに満ちた映画というのは、こういう作品を言うんだろうなあ。しかし義娘役の原節子さんの気高さときたら、、凄まじい色気に失心しました。そしてこの郷愁を誘う後味、堪らんですなあ。また見る。

—好きな台詞
「ええもんじゃなあ、東京は。こんな所でうっかりはぐれでもしたら、一生涯探しても会われへんよ」
明石です

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