不在

東京物語の不在のレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.8
小津は、襖や障子戸がカメラのファインダーやシャッターと同じ働きをすることを知っていたのだろう。
日本家屋や畳特有の規則正しく並んだ線たちが遠近感を際立たせ、その中で生きる人間たちを時に近付け、時に切り離す。
そして、上からでも下からでもないアングルから人を正直に切り取る。
全員の言い分に対して、小津は平等なのだ。

ラストにまるで巻き戻ったように冒頭のシーンに戻ってくるが、そこにとみはおらず、周吉と、紀子にあげた形見の時計の音だけが響いている。
時間は決して戻ることはないが、とみが亡くなった後の時間を、周吉と紀子は離れていても共に分かち、生きていくという事だろう。
不在

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