カッパロー

東京物語のカッパローのネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

老いと、子供と、幸せと。

小津安二郎作品は2作目。1作目の秋刀魚の味が好みだったので楽しみな作品だったが、期待を裏切らない素晴らしい作品だった。

物語は、東京に住む子供たちのもとを訪ねる老夫婦から始まる。現在と比べて交通の便が悪かった1953年。彼らは東京で娘や息子の家に厄介になり、気を遣われながら、大切なひとときを過ごしていく。

子供たちと老夫婦が過ごした時間は客観的に見ると幸せそのものである。しかしながら、両者の中にはどこか大人としての自立した思考があり、単純な幸せでは終わらない複雑さがある。

東京観光に連れていったり泊まるところを提供したりすることを薄ら嫌がり、熱海に送る子供たち。
「こりゃ世の中の親っちゅうものの欲じゃ。欲張ったらキリがない。こりゃあ諦めなあかん。」と、息子娘に一種の諦念を抱く父親。

両者は少しすれ違いながら、それでも(最期の)ひとときを大切に過ごしていく。

紀子さんのキャラクターが本当に良かったな。夫を戦争で亡くし悲しみの中にありながら、その大切な夫の両親に対して心を尽くしたおもてなしをする。血が繋がっていない義父母でも、本物の子どもたち以上に老夫婦を歓待する。それでいながら、「(最近は亡き夫を)思い出さない日さえあるんです」と、罪の意識さえ覚えている。
もちろん今の時代とはズレる、昭和的な理想像の女性ではあるものの、自分には素敵に思えたし老夫婦にとっても心動かされる交わりとなっていたように思う。
カッパロー

カッパロー