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東京物語のTAMUのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.1
今更いいも悪いも評価は出尽くしたのでしょう言わずと知れた日本映画の傑作。
恥ずかしながら初見。そして、良いものは年を大きく経ても良い。

1953年、戦後8年しか経っていない頃、尾道に住む老夫婦が娘や息子の住む東京を訪れる話。

東京の地で仕事に明け暮れる息子家族、娘家族。両親が会いにきた喜びも束の間、親子の関係の煩わしさ、居心地の悪さ、そんな中で育まれる戦死した次男の嫁(原節子)との交流が描かれる。

終盤、爺さん笠智衆が語る、婆さんが語った東京旅行の一番の思い出が語られる。
それはバスによる東京見物でも無く、熱海への小旅行でもない。

思いやり。本作は、海外でも高い評価にあり、そもそも小津の製作段階で、海外でも普遍的に伝わるテーマとして選んだとのことで、そもそもの視座が高い。

確かに公開67年後に初見の自分としても、まるで古ぼけたテーマとは写らず。今もなお家族は家族の呪縛から離れられず、時に傷つける一方で、家族と少し離れていても心を通わせられる人はいるもの。

小津が乗り移った爺さんの視点からは、それが良いも悪いも語られない。それが人生の機微。
煙突から上がる黒煙が示すように、経済発展は人々の心の繋がりを物質的な喜びに変えていってしまう。

結果として、いたわり、や、思いやり、の乏しい社会となった今、何か心の繋がりを広げて行きたいと思った次第。

ちなみに個人的には、帝釈天の御前様(笠智衆@男はつらいよ)と黄門さま(東野英治郎@水戸黄門)の泥酔状態に胸キュンだった次第w

ちなみに本作は大阪駅真上にある大阪ステーションシネマで鑑賞。現在、ランボー新作などに紛れて、男はつらいよシリーズや小津作品、更にはもののけ姫などスタジオジブリ作品を上映中。

コロナ禍でこのようなラインナップなのだが、こうして見ると悪いものではない。
古きを訪ね新しきを知る、ではないが、この映画親父は見たことあったかな、とか、笠智衆の話し方が自分の爺ちゃんに心なしか似ているぞ、とか、郷愁に浸る絶好の機会になるような。
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