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東京物語のNのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
小津作品は2作目ですが、白黒ということもあり余計に映像美が際立っていた気がする。
街並みや家の中での直線的な表現の多用。
垂直水平が美しく、人工的な美という印象。
途中途中で挟まれる重なり合う家々や終盤の墓跡なんかは家族の寄り添いを表したメタファーなのか?それらのショットは人工的な中に温かみを感じられた。

ほとんどが家の中でのシークエンスだが、日本家屋ならではの襖越しの奥行き、登場人物たちが登場して去っていく一連の流れが気持ちいいくらいに滑らかだった。
キッチンでの場面で登場人物3人がタイミングぴったりで同時に画面から去る瞬間は狂気的な美の追求を感じたな。
それでいてストーリーは至極シンプル。当時の変化しゆく日本に家族を重ねて否定するでもなく見守る、とても優しさのある映し方。

冷たく感じる子供たちを嫌いになれないのは自分と重なる部分もあるからだろうな。
変化しゆく真っ最中の紀子という存在にフォーカスを当てたのにも良かった。紀子であり続けたいと誰もが思う反面心の中の変化の一部に気づき、絶望する。
それを許して受け入れる最後の場面は堪らない。
小津が思う変わっていく日本に対しての思いを代弁しているような。

家族の描き方もすごく共感性が高かったけれど、血の繋がりのない赤の他人との関係、その映し方が特にリアルだった。
ほどほどの距離感の人の方が何事も話しやすく、実は自分が心の底から思っていることを話せたりするんだよな。

3という数字が個人的にたくさん見受けられたんだけど、気のせいなのかな?3人で映るショットが多かったり、母親の死ぬ時間も3時。家族ではない第三者の紀子のことなのか、当時の不安定さを表しているのか。?
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