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玄牝 -げんぴん-のKHのレビュー・感想・評価

玄牝 -げんぴん-(2010年製作の映画)
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アテネフランセ文化センターで、組画主催上映会2部にて鑑賞。
映像的価値はものすごく高いため、円盤化されない理由はわかるが余りに勿体無い。また吉村院長の矛盾を抱える様、家族や助産師もしくは妊婦さんとの機微なすれ違いは映画としての完成度を高めている。
しかし、この映画の根本的な考え(吉村先生ないしは河瀬直美)には素直に納得できない。
現代のお産に対する医療の介入(全面真っ白の無菌室であらゆるリスクを最小化する)を「文化の異常」と警告し、自然に回帰し体を動かし自然分娩を推奨する。(具体的には江戸時代の暮らしい)
確かに思想としてはもっともらしいし自由だとは思うが、それを実践することへは疑問。
確かに現代医療ではあらゆるリスクを勘案して、お産というイメージに対して不安や恐怖を抱きやすい。しかし現代医療の目標は「リスクを抑え平均的により多くの命を救う」ことだと思うが、それに対し吉村先生は帝王切開、無痛分娩を否定して、その結果「死」を招いたとしても自然分娩を主張する。(実際は死ぬ前に救急車に運ばれて大きな病院へ運ばれると思うが)
自然分娩の神秘性はこの映画が最もの証明になってることは否定しないが、決して排他的になるのでなく、自然分娩は一つの選択肢として存在すべきだと思う。
古家は確かに笑顔で溢れていて、それが仮にカルト的であっても一つの方法として健康だと思う。しかしこの映画も含めてもう少し批評的な視線を持つべきだと思う。
この映画に蔓延する思想を除いて一つの映像作品として観るべきだと思うし、その点では挑戦的で素晴らしい作品だと思う。
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