みおこし

セールスマンの死のみおこしのレビュー・感想・評価

セールスマンの死(1951年製作の映画)
3.5
アーサー・ミラーによる戯曲の映画化。名優フレデリック・マーチが過去の栄光に囚われたセールスマン役を熱演。

かつては敏腕営業マンだったウィリー・ローマン。過去の栄光とは対照的に、今や年老いてその手腕も鈍り、担当していた得意先も失っている。さらに2人の息子は未だ自立せずと家庭に大きな問題も抱えており...。

かなりシビアかつ重いテーマ。本作が生まれた時代背景を鑑みると、第二次世界大戦後。勝利の果てに経済的にも豊かになる一方で、競争化する社会について行けず、家庭内崩壊など新たな深刻な問題に直面する壮年期のサラリーマンの悲しみを見事に描いた秀作でした。
仕事に一生懸命打ち込んだ先にあったものは、皮肉なことに仕事を通して養って来た大切な家族との断絶。仕事至上主義、家庭至上主義...。さまざまな価値観があるものの、汗水垂らして働いて来たウィリーがたどる運命はあまりに気の毒というか、報われなさすぎてこちらまで意気消沈。でもこの問題は現代の私たちにも十分起こり得ることなので、なおさらゾッとします。
"正直者がバカを見る"とよく言いますが、堅実に誰よりも生きてきたウィリーの姿を見ると、本当に救いようがないです...。

生産性、効率主義...。アメリカが戦後あらゆる点からナンバーワンの座を獲得し、得たものがあった中で、ローマン家のように多くを失う人々もいたということも忘れてはならないのだなと。
非常に考えさせられるお話でした。
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