Omizu

セールスマンの死のOmizuのレビュー・感想・評価

セールスマンの死(1951年製作の映画)
5.0
【第24回アカデミー賞 主演男優賞他全5部門ノミネート】
アーサー・ミラーの同名戯曲を映画化した作品。ゴールデングローブ賞では主演男優賞と監督賞を獲得したがアカデミー賞では無冠に終わった。

この年はかなり豊作で、『巴里のアメリカ人』『欲望という名の電車』『アフリカの女王』『陽のあたる場所』があった。

長年セールスマンをしている男が過去を振り返っていくという物語で、構成がとても舞台っぽい。フレドリック・マーチの鬼気迫る演技が素晴らしく、人当たりもよく真面目に働いているのに収入は楽にならず、家庭の問題も抱え狂っていくのが痛々しく哀しい。

また辛抱強く耐え、夫を支え続ける妻の優しさが切実でその独白には泣いてしまった。

気のいい人ほど損をして、淡白だったり親の威を借りた人が成功していく世の中ってなんなんだろう。とにかく希望がない。

昔の映画だということを感じさせない切実さと批評的姿勢を感じる。現実と過去が曖昧になる演出や影を見事に使った撮影が素晴らしく、結末には涙が止まらなかった。真面目な人ほど損をするような冷たい現実を見事に描いた傑作。
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