うにたべたい

狂った一頁のうにたべたいのレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
4.0
非常に難解な映画です。
ジャンル付けするのであればホラーということになるのでしょうか。

大正の最後の年、同年12月に昭和元年となる大正15年公開の映画で、モノクロ字幕なしのサイレント映画です。
そのため、登場人物の会話などすべて口パクで、状況はあたりをつけて把握する必要がありますが、理解しようと頑張るとこちらの頭がおかしくなりそうな不安感を受ける内容です。

当時、新感覚派の旗手として活動していた川端康成が脚本を書いていて、本作もそも思想が見られます。
前衛芸術運動における日本初のアヴァンギャルド映画と言われており、単純に理解できないのはそう作られているためです。
川端康成氏の作品同様、表現技法が多彩で、ハマることができれば、世界に没頭できると思います。
また、撮影助手に、後の円谷英二が関わっていることもあってか、奇々怪々な世界観が非常に柔軟に表現されてました。
メガホンを取っているのは、後に『地獄門』でカンヌ国際映画祭でグランプリ受賞した衣笠貞之助と、顔ぶれが凄まじく、本作は間違いなく日本映画史上的に重要な一作です。

あらすじ自体はシンプルで、少し検索すれば30秒で読めるあらすじが出てくると思います。
ただ、あらすじを追って観るような映画ではないので、できれば初回は何も頭に入れずに観るのがおすすめです。
妻を狂わせてしまい、妻が入院している精神病棟で働いている一人の老人が主人公です。
その精神病棟には、踊り続ける女、怒声を上げる狂った男達、笑い声を上げる狂った女達などの狂人達と、医者、看護婦がいます。
その病棟へ老人の娘が老人へ結婚の報告に来たことをきっかけに男は妻に向き合うのですが、現実と幻想が入り混じり、やがて垣根が崩れてゆく展開です。

正直なところ、おもしろいものではなかったです。
男の行動の結果、狂人の中で狂ってしまい、面をつけて愉快そうにする場面は不気味の一言です。
印象に深く残る名作でした。