ヒダリ

狂った一頁のヒダリのネタバレレビュー・内容・結末

狂った一頁(1926年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ストーリーがよくわからんと言われているが、途中までは映像だけでもなんとなしにわかるだろうと思う。後半どこからが妄想でどこからが現実なのかあやふやになるだけだ。
ただ正直筋書きはどうでもよく、100年も前にこんな強烈な映像があったのかと驚嘆させられる演出の凄み、狂気表現の巧みさがこの映画のメインだ。患者達は完全に目がイってる。役者って本当に凄いのだと思う、シラフの人間ができる目ではない。特に踊り子の登場シーンは、もうこれだけでいいから見てほしい。その鮮烈さと言ったら言葉で表現するのはもはや野暮だ。そして彼らが見る世界も恐ろしくサイケデリックだ。歪み、オーバーラップ、増殖、幻視、変異の洪水に後頭部を殴られ続けていた。
そうしてこちらの脳も焼き切れかけている後半気がつく。主人公小使の目付きが段々狂人側と同じものになっていること。幻覚とも現実ともわからぬ終盤、どちらにしたって彼は明らかに狂気に当てられてしまっている。
結局はハッと目が覚め、何も変わらない(どころか娘の結婚は恐らく破談、鍵を失くし妻の様子も見れないので何なら悪化している)陰鬱な日常が続いていくことが暗示されるが、中盤でケンカした患者がなぜか小使に深々と頭を下げるシーンもあって、狂気と正気を隔てる境界線は、思ったより平易に反復横跳びできてしまう代物なんだと考えたりした。
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