SHOHEI

狂った一頁のSHOHEIのレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
3.5
精神病院で雑用をする男と病院の檻の中で過ごす彼の妻のやり取りを描いた70分のサイレント。字幕は無く音楽はもちろんあとに付け足されたもの。当時は活弁士が物語を説明するので話の筋道は理解できただろうが、今は口元の動きと人物の表情で推し量るしかない。しかし実はその映像のみで表現するというやり方こそが当時監督衣笠が理想とした上映方式だそう。肝心の映像は血気迫っていて申し分ないが、やはり台詞音声が欲しくなる。登場人物の過去や幻想、人間関係が物語上で行き交うので全てを察するのは不可能。100パーセント作品を理解する上で衣笠の意図が通用するかと言えばノーだと思う。もちろん映像だけで100パーセントを感じ取ってほしいとは思っていないだろうけど。あらすじを予習して観るのも良いと思う。フォローすると映像は狂気的でとても良い。『カリガリ博士』の影響も感じるが、嵐の夜に踊り狂う患者の女、日本的な湿った雰囲気が混じり合って断然カオス。当時どれだけ映像によるホラー表現があったかは知らないが、もし何もない中手探りでこの雰囲気を出したのだとしたら発明なのでは。ちなみに若き円谷英二(当時は英一)も撮影補助で参加しているらしい。
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