映画漬廃人伊波興一

狂った一頁の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
4.4
マジで面白い「狂った一頁」

前衛的でも難解でもなくモダンホラーの先駆けです。

サイレントであるのは分かってましたが無字幕とは知りませんでした。でも無字幕だからこそ醸し出せる狂気(ポエム)が味わえます。

フラッシュバックと多重露光に酔いしれてるときにいきなり家族から肩を叩かれギョッ!としました。幼いころ深夜一人で怖い映画を震えながら観ていた時以来久しくなかった経験です。

川端康成と犬塚稔が共同脚本。円谷英一(英二)が撮影助手。すごい顔ぶれですね。

監督衣笠は横光利一の小説の映画化が頓挫したきっかけからこの企画に入ったそう。主演の井上正夫はノーギャラで出演して老け役を演じるためにデニーロ・アプローチばりに髪を抜いたらしいし、統合失調症の患者を演じた役者さんたちも並々ならぬ思いで挑んだようです。さらに当時の新感覚派の小説家たちが製作実現のために力をあわせたそうですが・・

興業的には大失敗だったそうです(うなずけます)

衣笠監督は莫大な負債を背負い、後々まで時代劇のメガホンを余儀なくされたそうな

映画外まで考えても文字通りいわくつきの問題作だったんです。

そこからさかのぼって「狂った一頁」を観ると余計に面白い