ドキュメンタリーの撮影隊が砂漠で立ち往生。いきなり絶望的なこのシチュエーションだけで最後まで行っても全然大丈夫な緊張感。
ヤコペッティをモデルにしたというヤラセやりすぎドキュメンタリー監督はいつでも真顔でスタッフや一般市民に超無理難題をふっかける。本人はいい作品が作りたくて一所懸命なので、彼とそれ以外の人との圧倒的温度差の描写が面白く引きつけられる。
「どうだ?いい考えだろう?」と熱っぽくやらせ演出プランを語りかける監督に「そう…それはいいわね…」といつもリアクションが薄いデリア・ポッカルドの退廃的なオーラ。しかし彼女とてただのクールな美女ではなく、彼女なりに葛藤しながら彼に同行している様子が見られるのが話に深みを与えている。
行為をエスカレートされた果てにベトコンに囲まれてボコボコにされるのはハッキリ言って自業自得なんだが、彼の純粋な?創作意欲にほだされているとなぜか同情してしまう。
ベトナム戦争を描いた映画は数多く、なにより本当の記録映像も相当ショッキングだが、創作が現実を誇張して、より真実を際立たせるっていうのかな。1967年という同時代の空気感のもとで、戦争という殺し合いの愚かさを、さらに愚かな行為に及ぶドキュメンタリー監督との対比によって鋭く抉り出せていたことに感動を禁じ得ない。