Omizu

にんじんのOmizuのレビュー・感想・評価

にんじん(1932年製作の映画)
3.9
【1934年キネマ旬報外国映画ベストテン 第3位】
『運命の饗宴』などのジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品。ジュール・ルナールの同名小説を映画化した作品。主演のロベール・リナンは天才子役と言われていたが、第二次世界大戦でレジスタンス運動に身を投じナチスにより処刑された。

一応希望の見える物語としての結末ではあるが、主演のロベール・リナンの哀しい最期を知ってしまうと複雑な気持ちになる。

新しく働きに来たメイドのアネットは、望まれない子として疎まれる「にんじん」という少年への虐待を目にする。そんな彼を救おうとするが、にんじんは自殺の想いに取り憑かれ初め…

終盤父親に詰め寄るおじいさんが言った「愛せない子なら最初からつくるな!」がベタだけど胸にきた。

母親と兄姉に虐められ、父親は無関心。そんなにんじんでもメイドのアネットや上述のおじいさん、小さいガールフレンドのマチルダと味方してくれる人はいた。でも結局親なんだよね。子供はやっぱり親に愛されたいんだ。

にんじん役のロベール・リナンは名演技。自殺しようとするシーンも素晴らしいが、祝宴で相手にされず虚ろな表情で座っているところは胸が痛かった。

児童文学、にしては重すぎる。一応希望のあるラストではあるが、辛い話。ジュリアン・デュヴィヴィエの的確な演出が光る秀作。
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