ふわふわ

にんじんのふわふわのレビュー・感想・評価

にんじん(1932年製作の映画)
4.0
フランスの作家ジュール・ルナールの児童文学『にんじん』の映画版


子供の頃図書室で出会った『にんじん』
親が共働きで寂しかった時に出会いました。

母親が本当の名前を呼んでくれずつけられたあだ名。
にんじんも父を『ルピック氏』
母を『ルピック夫人』と他人行儀。
それには訳があるのです。
にんじんの家族は父、母、兄、姉の5人家族。
にんじんは母親から“虐待”を受けていた…

原作は母親から虐待を受けるにんじんの目線で語られる為、自分が虐待を受けている気持ちになる。
辛い…
なんでこんなに辛い話しが児童文学なのか
と子供ながら不思議に思っていた。
(当時は"虐待"という言葉を知らなかった)

映画版は原作を上手くまとめています。

母親が巧みに人の心を操って、にんじんには罪悪感を、他の人間には嘘をつきなんでもないように仕向け、他人を支配している。
子供がこんな精神虐待を受けたらどうなるのか。
にんじんは自己肯定感を無くしていき、ついには……
父親、兄、姉はにんじんが虐待を受けているのに無関心。
自分に矛先を向けられては困るからだ。
映画版ではより父親がにんじんに関心を寄せたので"救い"となった。

原作者のジュール・ルナールの子供の頃の体験を元にしているという。
傷は深かっただろうな。

子供はただ親に愛されたいだけ。
シンプルな願いが叶わない『にんじん』
虐待によって潰れてしまう子もいるが、少しの幸せを見つけられたり、何か現実逃避できる事があれば生き抜けるだろうか。

こんなに辛くて可哀想な話しなのに、何度も読んだ。
親を求めるにんじんに自分を重ねていた…
そして、言ってもわからない人には何を言っても無駄なのだ、状況が過ぎるのを待つしか無いのだという事を知った。
大人になって思うのは、児童文学で子供に読ませるよりも大人が読むべき物語である、という事……
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