不在

少女ムシェットの不在のレビュー・感想・評価

少女ムシェット(1967年製作の映画)
4.8
狩りという行為は子供にとってはただ残酷なものだ。
大人は生きる為にそれを正当化し、罪なき動物を殺して捌き、食卓へ並べるまでの過程を子供達に隠す。
しかしこの少女は、その過程を見てしまった。
人が生きる上で行う非道な行為。
普段子供には隠されている、人間の暗い側面を。
そして少女は、自身すら狩りの対象であったことに気付いてしまうのだった。

しかし彼女は無力な小動物ではない。
自らの意志で結果を選び取った一人の人間なのだ。
過程を鑑みない子供のような大人達の目には、身勝手な自死として映るだろう。
しかし彼女が選んだ行為の意味は、彼女にだけ分かればいい。
だからこそブレッソンは、その結末を観客にすら伏せる。
彼女の尊い選択が、我々に汚されてしまわないように。
不在

不在