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河のatyのネタバレレビュー・内容・結末

(1997年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

蔡明亮監督の他の作品に比べて、遥かに動きが多く、分かりやすいストーリーもあって、一番楽しく鑑賞できた。

バイク事故で首を痛めた男の話。年齢設定もイマイチ分からないが、親と一緒に暮らしているところを見ると20代前半だろうか。真っ直ぐにならない首を気にし続ける映像をずっと見ていると、こっちまで首が痛くなってくる。首をかしげる動作のリアリティがすごかった。整体に鍼灸に薬香と、沢山の治療方法を試すものの一向に治療が進まない。登場してすぐはカッコいい青年だった李康生だが、親に連れ回されるうちに、自殺願望まで持ってしまう。首が並行じゃなくなるにつれて、社会生活との平衡感覚も失われていく。

父親に手でされるシーンは衝撃的。母親を犯すとか、父親を殺す、みたいなギリシャ神話からの普遍的なものを一つ越えている。タブー中のタブーのようなシーン。

あと、雨漏りと性欲が強く結びついているように感じた。雨漏りを補修する父は、AVで発情する母を避け続け、(意図してはいないが)実の子供を犯し、射精と同時に雨漏りの補修も決壊する。

相変わらず静かな終わり方だったが、物語冒頭の、ひょんなことから死体役をやるシーンは、今思うと彼の死を予告しているのかもしれない。
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