TaiRa

非常線の女のTaiRaのレビュー・感想・評価

非常線の女(1933年製作の映画)
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日本がまだモダンだった頃の小津による和製ギャング映画。やっぱ「アメリカ映画」の人だね。

昼はタイピスト、夜はギャングの情婦やってる田中絹代という時点で何だかとっても良い。ドレス着た田中絹代初めて観たかも。そりゃ世代的にはモガなんだよな。世界観が国産アメリカ映画になっているのも最高。日本だけど日本じゃない場所みたい。サイレント期の小津にあるコミカルさも好き。全員で一斉に同じ方向見る演出とか、もうウェス・アンダーソン作品的な可愛さ。足元だけを映すショットとかドリーショットとか今観てもカッコいい。元ボクサーのギャングのボス、その情婦、ギャングに憧れてる学生ボクサーとそんな弟を心配する真面目な姉を描く。この真面目な姉を演じてる水久保澄子が可愛い。男も女も惚れる聖女的な存在。当の本人はその後スキャンダル女優になって消えちゃったらしい。田中絹代と水久保澄子の事実上の対決も切り返しがクール。そっから足元だけでキスの表現。濱口竜介はこれ真似たのかな?あと姉が働いてるのがビクターの販売店でビクター犬がめっちゃフィーチャーされてる。田中絹代と拳銃という組み合わせが最高な強盗〜逃亡までの流れも良い。堅気になろうとするが義理を通す為に最後の犯罪に向かうってのも正しくギャング映画。ラストのフレームインした手が二人の手を引き離すディティールの重ね方とかオシャレやなぁって。小津のサイレント観ると何故トーキーであんな作風になったのかがちょっと分かる。それと字幕のフォントが読み辛いけど可愛い。「返り咲き」にカムバックってルビ振ってた。
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