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少年と砂漠のカフェののこのこのこっちのレビュー・感想・評価

少年と砂漠のカフェ(2001年製作の映画)
3.0
ジャリリはまだほとんど鑑賞していない。何年か前に観た『ハーフェズ ペルシャの詩』は記憶に残っていないし先日の『グリーン、ホワイト、レッド ーイラン映画の歴史を求めてー』はイラン映画史をコラージュしたようなドキュメンタリーということで異常にわかりやすい作りだったことは否めないと思う。

まず、なんでこのタイトルやらパッケージの宣伝文句なのか、こういうのは平明なハートウォーミング求めさせる詐欺と言われても仕方ないだろう。原題『Delbaran』だし(日本が製作にもかかわっていてと考えると邦題やら酷い)。少年が打ち解けていくさまではないし、カフェを見せることも主題にはないはずだ。集客のためなんでしょうけどここではとりわけ感じた。

ここにあるのは、過酷な状況下にある人間のその中での自然な生活であり日常。われわれの視点からしたときにイラン・アフガン国境のデルバランという鄙びた土地に戦災を避け密入国した少年という大切な一点を見失うべきではない。少年キャイン(Kaim)は老人ハン(Khan)の元で既にいっときの安心を得て生活をしていて腕が微妙なエンジニアや、密入国者を捜す警官とも平穏にやりとりしていて、基本は彼ら4人の様子が特に説明もなく描かれる感じだ。取り分け多いのは寂れた土地でありエンジニアもいるわけで自動車関連の出来事が多い。所持紙幣であったり、警官の対応であったり、少年の仕事の怪しさであったり、きっとそうなのだろうなという描写が多い。

目を引くのは釘であるがあれは戦争というものに対して或いはその国家の対応への些細な反抗を美しく撮ったものだろう。個人的に印象的だったのは銃撃や砲撃を転換に使う中でじじいの火おこしが映ったところ。いや、銃口向けてるのかと思って怖かったって。