回想シーンでご飯3杯いける

西部戦線異状なしの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
4.0
2022年にNetflixで配信されアカデミー賞の他、多数の映画賞を獲得したドイツ版リメイク経由で、いよいよオリジナル版を鑑賞。

とは言っても、原作は1929年に刊行された小説である。このオリジナル映画版も、ドイツ版も、大枠では同じストーリーになっており、第一次世界大戦直後の執筆ながら、内包する反戦メッセージがいかに強烈なインパクトを持っていたかを伺い知る事が出来る。

このオリジナル版も、まだ第二次世界大戦が始まる前の製作である。戦争の臭いが濃厚であっただろう当時に於いて、製作~公開を実現したエネルギーにも感服するし、限られた撮影技術の中で、当時の戦場の恐怖を描き切る手腕にも驚かされる。

端的に言えば、このオリジナル版は兵士達による人間ドラマに重きが置かれ、ドイツ版は映像や音楽を交えた体感的な演出が強烈な印象を残す。共通点としては、泥や煤で顔の見分けがつかない兵士達の姿だ。各人には名前が与えられ、その人柄にもスポットを当てているが、一旦戦闘が始まれば全て泥と煤で塗りつぶされる。それは物理的な話でもあり、戦争が人間性を奪うという意味での比喩でもあるはずだ。

技術的な限界からか、戦闘車両が登場するような派手なシーンは少なく、代わりに野戦病院でのやりとりが、戦争の惨さを描き出す。