こにし

西部戦線異状なしのこにしのネタバレレビュー・内容・結末

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

圧巻の映画だった。
第一次世界大戦をドイツ側から見た映画。

「この映画は告訴でも告白でもない。冒険映画などではない。死と向き合うものにとって死は冒険ではない。この物語は、たとえその砲弾から逃れたとしても、戦争によって破壊された男たちの世代について、ただ語ろうとするものである。」

序盤、ドイツの町では部屋の中で愛国心を煽ったり、戦争を楽観視する人々と、その部屋の窓やドア越しに行進するドイツ兵を1つのカットで同時に見せるシーンが多くあり、国民にとって戦争が身近にありながらもどこか自分達の外側での出来事(=世間での出来事)のように描かれていた。
一転して西部戦線に舞台が変わると、荒廃した部屋の中と、ドアや窓から同じように荒廃した町並みと行進する兵隊が同時に映し出される。塹壕の中でのシーンでは、砲弾の音と共に塹壕の入り口では砂埃が舞い上がり、塹壕内も柱が壊れ天井から砂が舞い落ちる。戦争の現場では、内も外もなくなり休まる場所もなく、常に死と隣あわせであることがこの対比で伝わってくる。
地獄の西部戦線を生き延びて、休暇で久々に故郷に戻った主人公に父親がドイツ軍の戦術を批判していたシーンでも、冒頭~塹壕での部屋の内外の対比が効いてくる。

戦闘シーンは今まで見た映画の中でもトップクラスに生々しかった。遠くから砲撃していた敵が、銃を構えてこちらに突進してきて、最後には目の前でスコップや剣での刺し合いになる。見えない敵が見える敵になり、1人の生活がある人を殺すという実感が徐々に湧いてくる。
穴の中で、主人公が刺し殺してしまった相手に「お前を助けたいんだ」「許すと言ってくれ」と懇願する。そしてその相手の家族の写真をみてしまい「お前の家族のために俺は何でもする」と言う。
これらの一連で戦争によって自分が人を殺してしまという悲劇もリアルに伝わってくる。
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