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西部戦線異状なしのほーりーのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1930年製作の映画)
4.1
この映画が作られたのが1930年。第一次世界大戦を痛烈に批判した作品であるが、それでも第二次世界大戦の勃発を止めることはできなかった。

映画・文学が大衆に与える影響がいかに大きかろうが、最終的には時代の大きなうねりには抗えないのだろうか。

レマルク原作のベストセラー小説を映画化した『西部戦線異状なし』は、志願兵として戦地に赴いたドイツの若者たちを通して描かれた反戦映画。

題名は主人公が戦死した日の司令部本部に「本日、西部戦線異状なし、報告すべき件なし」と報告された事に由来しているが、本映画にはその描写はない。

代わりにラストシーンは序盤の出征した主人公(演:リュー・エアーズ)たちが後ろを振り返りながら行進するショットにおびただしい数の墓標とをディゾルブしたものだった。その時の不安を隠せない彼らの表情が胸をつまらせる。

製作から九十年近くの月日が経っているが未だに色褪せていない。特に戦場の臨場感が実によく表現されている。

塹壕でのフランス軍との攻防戦。迫撃砲の轟音が響き、砲煙の向こうから突進してくるフランスの歩兵たちをドイツ軍は機関銃や手榴弾で迎え撃つ。

鉄条網を掴んだまま残された両手首、機関銃の前に次々と倒れる兵士(この移動カメラが素晴らしい)とまさに地獄絵図が展開される。

そして後半でリュー・エアーズが砲弾でできた穴の中で一緒に落ちてきたフランス兵を殺害する場面。

段々と息も絶え絶えになるフランス兵の懐から家族写真を見つけた主人公はハッと彼らフランス人も自分たちドイツ人と同じ人間なのだと気づく。この時のフランス人の死に顔が笑みを浮かべていて、かえって主人公は自責の念でいっぱいになる。

ちょっと今にして思えばストレートすぎる描写が多いのだが、それを補うぐらい緊張感に包まれた傑作であると思う。

なお本作は初めてアカデミー作品賞と監督賞の二冠に輝いた作品ですネ。

■映画 DATA==========================
監督:ルイス・マイルストン
脚本:マクスウェル・アンダーソン/デル・アンドリュース/ジョージ・アボット
製作:カール・レムリ・Jr
音楽:デヴィッド・ブロークマン
撮影:アーサー・エディソン
公開:1930年4月21日(米)/1930年10月24日(日)
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