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真人間のhorahukiのレビュー・感想・評価

真人間(1938年製作の映画)
3.8
記録です。

フリッツラング監督作。バスでの「求婚するならOKよ」に至るまでの水面下でのもどかしい感覚の持続がたまらないし、それまで画面が硬質的だったからこそのダイナミックなカメラでの2人の交差の解放感がワクワクする。エスカレーターでの手タッチで関係性を伝えてから、『激怒』的な退っ引きならない事情が存するのかと思いきや(あるんだけど笑)、あちらでは悔やむことになった離れる選択をやめ、離れない選択を採るところに作品外部に起因する高まりもあった。ヒロインの役の方も同じだし。その後の2人の微笑ましさがある一方で、部屋到着時の暗闇、急激に迫るカメラに映し出される蝋燭の光源とヒロインの笑顔と背景の重い闇に『激怒』との類似(機関車)を感じた。その中でも出てっておばさん→ニッコリおばさんの手のひらクルー感とか「今晩は遠慮することないわ」とかいう遠慮のない下ネタだったり、知らない関係を楽しんでるとことか随所にラング映画らしいユーモアが散りばめられてる。地味に好きなのはダイナミック交差の直後のトランクの荷物が溢れるところ。『リリオム』や『西部魂』と同様に過去の関係性と現在との相剋が後半を先導するのだけど(過去と現在という点では『激怒』も同様だけど少し異なる)、どちらに個としての本質があるのか…についての分析的であって他2作に対して、本作はそこに目を向けているように見えて、より接着的というか『M』や『メトロポリス』『激怒』の集団の発作的作用に対する分析のような感覚だと思う。あの弁護士や救世主のような役割を今作ではヒロインが担い、その一方で物凄くライトに仕上げており、その分、着地点が『激怒』より更に御伽話的なものになっている。この辺りはラングにとっての緊急性の違いに起因するのかな…とか思った。この空気感の違いはドイツ時代を思わせる牢獄のシーンにも現れているように思う。そしてその過去はラングにとっては…という読み方もできそうなのが面白い。


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