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メガゾーン23のbackpackerのレビュー・感想・評価

メガゾーン23(1985年製作の映画)
3.0
第35回東京国際映画祭 鑑賞17作『メガゾーン23』

"東京と信じて疑わなかったこの街は、宇宙船の中に作られた、虚構の都市だった…。"

東京国際映画祭ジャパニーズ・アニメーション・レトロスペクティブ部門"アニメと東京"セレクト作品は計4作。『幻魔大戦』、『機動警察パトレイバー2the Movie』、『劇場版ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』、そして本作『メガゾーン23』。
本作のことは名前くらいしか認識していなかった素人ですが、いざ見たらまー凄い凄い。これまでの人生を彩ってきたSF作品の色々なミームが、本作に集約されていたことに、度肝を抜かれました。

目下リブートプロジェクトが進行しているらしいのですが、本作の立ち位置を簡単にまとめると、〈1980年代OVA全盛期の、SF・美少女・戦闘メカアニメのエポックメイキングな金字塔〉とのこと。3作もOVAが作られたなんて、まさにOVA時代の寵児って感じですね。
といっても、私は生まれた時点でOVA時代も終わっていましたし、ご家庭用ビデオデッキも安価で普及していた頃に子供時代を過ごしたうえに、すぐにDVDも登場したため、歴史物語感覚でしかその時代の事を存じ上げませんが。

『超時空要塞マクロス』や『機甲創世記モスピーダ』のスタッフが参加し、変形メカの流れを踏襲したロボットアニメだったようですが、スポンサードしてくれる予定の玩具メーカー"タカトク"が1984年に倒産したため、TVシリーズからOVAに変更されたという、始まり時点から曰くつきだったとのこと。プロデューサーの三浦亨氏と演出/執筆家の柿沼秀樹氏のお二人のトークショーは、裏事情が面白おかしく語られることからか、観客も大いに沸いていました。
(観客についての感想ですが、明らかに他の上映作品とは異なる層の人しかいなかったのが印象的です。皆さんの纏う雰囲気もい独特で、なんだか場違いな感じでしたね。年齢層も高めで、私と同年代の若者はごく僅か。先日見た『花の詩女 ゴティックメード』と比べても、熟練の古強者だけが居並ぶ世界でした。)


ストーリーへの感想ですが、『マクロス』と『マトリックス』と『未来世紀ブラジル』といった、多くのSF作品を連想させる内容で、本当に驚きました。
「なんかこの東京、ちょっと違うな?」という技術的違和感を覚えたと思ったら、なんとこの世界、巨大都市宇宙船の中に1980年代の東京が再現され、人々はその事実を知らぬまま巨大コンピューターによる統制の下生活しているという、ヘビーな設定だったではありませんか!!
虚構の世界を機会がコントロールし、地下には廃墟となった東京の街並みが存在する。即ち、何世代もの間、この巨大コロニーは階層を増築し、人々を同じ時代に閉じ込めているということ。おお~、ゾワゾワするなぁ。
疾走感満載のボーイミーツガールから始まる、少年少女の青春劇に、ロボットへ変形するバイクを偶然手に入れた主人公・矢作省吾が、世界の真実を知り大人たちと戦うことになる、鉄板の熱い展開。惨い殺しと美少女・高中由唯とのエロティックなベッドシーンの対比。爆発の熱量溢れる戦闘シーン。そして、満身創痍の結末からの、次作に続くエンド……。

いやー、熱いなあ。そして面白い。
多くSF作品のミームが凝縮された設定は、今ならより洗練された形で作れそうな気がしますし、リブートプロジェクトには是非とも期待したいですね。
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