Omizu

幻の光のOmizuのレビュー・感想・評価

幻の光(1995年製作の映画)
3.5
【1995年キネマ旬報日本映画ベストテン 第4位】
『万引き家族』是枝裕和監督の商業映画デビュー作。宮本輝の同名小説を原作とし、いきなりヴェネツィア映画祭コンペに出品され撮影賞を受賞するなど国際的に高い評価を得た。

非常に静かな作品。本作が映画デビューとなった江角マキコは独特の存在感がありいい。是枝監督の研ぎ澄まされた映像美に魅せられる。

静かな映画が好きな人はきっと気に入るはず。しかし個人的にはあまりに静かすぎて退屈してしまった。余計なものを排除した映像美は素晴らしいが、盛り上がりに欠けるのは事実。

江角マキコは独自の存在感があるが演技が上手いとは言いがたい。彼女の演技力に頼る部分が大きい分そこが気になってしまった。

映像センスだけで言えば最近の是枝作品より鋭いかも。静かだが辛辣な映像がすごい。最近は最近でいいんだけどごちゃごちゃした画作りが気にならなくもなかったのだが、本作はシンプルで鋭い。こんな映像も撮れるんだと素直に驚いた。

なぜ夫は自殺したのかという疑問がこの映画を通した謎になっているわけだが、それが解明されることはない。「そういうときもある」という言葉が出てくるのだが、それに尽きるのかも。人間生きていればそういうときもある。

永遠に解けない謎をふっかけられたようなゆみ子は苦しむ。悲劇は自分のせいで起きたのか。それは結局分からない。

今ではすっかり日本映画を代表する作家になった是枝監督、その原点を知るという意味で貴重な作品だった。商業映画デビュー作にしてこの鋭さ、僕はそこまで好きにはなれなかったけど恐るべし。
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