でしょうかな

おそいひとのでしょうかなのレビュー・感想・評価

おそいひと(2004年製作の映画)
3.7
身体障害者の住田は、バンドマンの友人やヘルパーに介護されながら日々を過ごしている。そんな彼のもとに、卒業研究のためとして女子短大生が通うようになる。彼女と過ごすうちに、住田がこれまで抑えつけてきた心の闇が溢れ出してきた。

介助を必要とする身体障害者が連続殺人を犯すというとんでもない設定。しかも主役を演じる人物は実際に身体障害者で、役名や劇中の役職も現実のものと同じであり、よくこんな役を演じたなと感心してしまう。
一見奇を衒っただけにも、冷笑や逆張りのみが根底にあるようにも思われるが、身体障害者が抱えるドロドロした欲望や悪感情を分かりやすい形で表現しているのだと感じる。満足に身体を動かせず、機械に頼らなければ言葉も発せない、そして周囲の刺すような視線。友人の楽曲(メタル?)はそんなストレスを吹き飛ばしていたんだろうが、彼を失ってからはその怒りに任せるように猟奇的な殺人を繰り返す。このときに流れるノイジーなBGMやモノクロのため明暗がバキッとした演出が鬱屈した精神を映し出していて鮮烈な印象。殺戮の果てのラストシーンもどことなく悲しくて好み。
難があるとすれば、全体的な演技力の低さ。現実をある程度反映しているのであろう主役の迫真の演技にはなかなか迫力があったが、それ以外は全体的にうっすら棒演技で重要な場面でも引っかかりを覚えずにいられなかった。
でしょうかな

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