このレビューはネタバレを含みます
【あらすじ】
電動車椅子で移動し、ボイスマシーンで会話を交わす、重度の身体障害者である住田は、介護者のおばさんとバンドマンのタケに介護を得ながらも平穏な一人暮らしをしていた。
そこに介護のおばさんからの紹介で卒論のために介護の経験をしてみたいという女子大生.敦子が現れ、住田と仲良くなる。
敦子がなんのけなしに言い放った「普通の人に生まれたかった?」という問いに、うすら笑いと取れる表情でボイスマシーンで「コロスゾ」と答える住田。
平穏な日常のはずがだんだんと住田の様子がおかしくなっていく。
重度の身体障害者が殺人鬼になるというショッキングな設定で、物議を醸した問題作。
実際の主演も兵庫県西宮市在住の重度身障者であり阪神障害者解放センター事務局長の住田雅清を、劇中と同名で起用している。
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古の個人サイト時代、Monstersだったかな?
世界の犯罪・シリアルキラーをまとめたサイトがあって、そこの管理人の日記ブログを見るのが好きだった。そこでおススメ?されてて知った映画。
問題作であるためかレンタルになかなかなく、また見るまでに覚悟が足りず見たいと思ってから20年越しに見た。
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【感想・備忘録】
冒頭などでガチャガチャを回す住田に、当たりくじの入ってないガチャガチャマシーンを何十年も回し続けるみたいな印象を受けた。
物語上、そこまで重要ではないが、バンドマンのツテで行く詩の朗読会で読まれる病気を読む詩、
病気とはいつからなのか 良い病気があってもいいのではないか この感情は誰かに病気のようにうつされたのではないか
日向正親『殺唄』(エンディングロールに出てきたのでたぶんこれ)という詩らしいが、これがなんともエゲツない。
「来るものみんな受け入れるな 潰れてしまう 選んでいけよ お前の周りは壁ばかりだ」と伝える先輩の目が美しかった。
狂い始める前の疎外感、ひとりで寂しい、性欲、などは心は健常者と同じであるという対比、
タケが死んだ後の「人間はすぐ死ぬ」に対する『違うよ』は自分は長く生きてるのにってことなのか…と読めてしまってしんどい。
住田の変化を決定づける「普通に生まれたかった?」と興味本位なのかバカにしたようになのか、なんのけなしに聞く女子大生、言っていいことと悪いことの区別がつかない現代のヤバいヤツの印象がある。1番死んでほしかった。
破天荒な映画だと思って見たので、見る前はマシンガンでもぶっ放して殺すのだろうかと思っていたけど、良い意味で地味な殺し方だった。
OPとEDのピコピコチューンな曲、『world's end girlfriend』というユニットを知れただけでも、個人的に見てめちゃくちゃよかった。
エンディングのラストのみカラーになるところがエモいというのか、すごいよかった。
内容が重過ぎるのでひとには勧められない。
障害者が殺人を犯すという衝撃的な内容より、実在人物を劇中の同名で主人公に起用、それは言われたら本人はどう思うのだろうか…?を本人役に体感させてるほうがグロくて、
でも、そう思ってしまうのも障害者を特別(イロモノ)のように見てしまっているエゴなのかなあ…となんとも言えない気持ちになる。
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【余談】
個人的な話だが、仕事を辞めてから数年ずっと働かず、週1.2バイトはどう?とりあえず病院続けてみよう?という周りの言葉も届かず、鬱気味で引きこもっていた友人がいよいよ貯金がつき、四面楚歌のような状況になった。
毎回(遠回しに)死にたいと言われるのを聞くのが辛く、君がいなくなると僕は寂しい…という意味で、いろいろな支援を調べてこういうのがあるみたいだよ、と、送った。
お金は貸せないし、食べ物を送ったり、そういう情報を伝えるしかできなかった。
すぐ後、友人がSNSの引用で『助けてくれないくせに国の支援策があるとか健常者がわかった口を聞くな!!!』と言っている文を目にし、すごくショックだった。
(黒企業時代)仕事ができない発達障害めと責められ限界が来て辞めた。今の会社ではたまたま働けているだけで、わたしは自分を健常者とは思っていない。
健常者とは何なのか。
たびたび考える。
この経験の前に、おそいひとを見れてたら、感じるものもきっとまた違ったのかも知れないな。
観終わった後、そんなことを思った