tntn

ラルジャンのtntnのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.2
凄かった。今の所ブレッソンの中では一番好き。単純に面白いし怖い。
無駄を削ぎ落とした演出とよく表現されるのも頷けるぐらい、映す必要のないものを映さないという姿勢を強く感じる。逆に画面に映るものは、必要だから映すわけで、例えば食堂のシーンで小競り合いが始まると、炊事車が映った瞬間に「何かが起こる」予感が張り詰める。それは、カメラ屋の外装が繰り返し映る時でも同じ。
相手の胸ぐらを掴むと、レストランの机が倒れ食器が割れる。
ATMの暗証番号を押すと、紙幣が吐き出される。
「ある一つの操作が何かしらの結果を招く」という描写が繰り返し繰り返し登場すると、この映画はその独自の世界において何かしらの法則や原理を描いているらしく、それは無情なほどに機械的であるという気がしてならない。モンタージュも人間の動線も厳密に機械的に処理される。中盤を大きく占める刑務所の描写も、扉の開け閉めやブザー音の鳴る・止むの機械性が強烈。だから子供、とか犬とか動物性のある対象が映ると印象的(ラストの犬は本当に忘れ難い)。ラルジャン、金、偽札は全ての発端となる1装置に過ぎず、中盤からは偽札は物語に関係なくなる。
クライマックス直前に、主人公と農場の女の対話(と言っていいのかわからないけど)は、『バルタザールどこへ行く』『スリ』にも共鳴する話題であり、確かに集大成とも思う。それだけに、この映画が示す結末の冷徹さが響く。ランプの光が禍々しく暗闇を照らし続け、ある瞬間で鮮血と共に破壊される。
tntn

tntn