ミシンそば

ラルジャンのミシンそばのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.0
人が人をどれだけ不幸にできるか、その連鎖のえげつなさを非常に淡々と描いた、ブレッソン最後のシネマトグラフ。
トルストイの原作が露悪的なのか、ブレッソンの冷血的な演出がその露悪性を増幅させてるのか。
何にせよ短く凝縮された悪意を観た。

切っ掛けは些細で、危機管理意識も未来への展望も何もなさそうなアホ面のブルジョア小僧が、友人への借金があったがために、大して出来も良くなさそうな贋札を使い、そこからその贋札を使われたカメラ店、そのまた別の店と連鎖し、事実上一人の無関係の男の人生が破滅する。
贋札はなぜアカンか、10歳のガキでも知ってることだけどどのようにアカンかを冷徹に教えてくれるのがこの映画だ。
そしてブルジョア小僧どもは大したお咎めもなしに物語からフェードアウトし、それが出来た所以が「金」と「親の力」であることも含めると無茶苦茶えげつないなと感じざるを得ない。

小僧どもは自分たちの軽挙によって人が破滅したことも、人が死ぬことも、もっと言えばこれが無ければイヴォンの“悪性”を起こしてしまうこともなかったかも知らず、負い目とかも一切感じずにのうのうと生きていくんだろうなぁ。