アキヒロ

戦場のメリークリスマスのアキヒロのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.7
「左の頬を打たれたら 右の頬も差し出しなさい」どころか
「上司を殺されたら、両頬にキスして差し上げなさい」映画だった。

こんな話と思ってなかったから(戦争映画だと思ってた)
冒頭でカネモトが捕虜の米兵を犯した罪で打擲されてて、衝撃。。。
この時代、日本でもキリスト教下の国でも男色は毛嫌いされるが、まさか主要人物にほとんど男色の気配がある。

坂本龍一の音楽は印象的で美しいが、
まさか本人をこんな重要な配役で使っているとか、キャスティングが意表をつきすぎてる。
さらに相手役はデヴィット・ボウイで、ハラ軍曹に当時は芸人だったビートたけし。
正直言って演技が上手いとは思わないが、過剰に演技してしまう最近の日本の俳優より悪いということはない。
さすが大島渚、一筋縄ではいかない。

日本の軍人と反抗的なイギリスの兵が関わり合う中で、恋愛にも似たような不可解な感情を育み始めるというシチュエーションがいい。
ジャックが花を食うシーンなんて、耽美的で絵画になりそう。

最後、ヨノイが俘虜長に対して、イギリスの擁する空軍で兵器の知識をもった人間は何人いるか聞いたとき、俘虜長は知らないと吹聴する。
そのことに激したヨノイはとっさに不慮長を斬ろうとするが、前に躍り出たジャックが俘虜長の前に出、あろうことかヨノイの両頬にキスをする。

ジャックは過去に弟が学舎でいじめにあっているのを知りながら無視した経験があり、同じ目にあっている俘虜長を助けたのは分かる。
その上、ヨノイにキスをしたというのは、やはりキリスト教の精神「左の頬を打たれたら 右の頬も差し出しなさい」を見せつけるためだったのか…。
すなわち「自国の俘虜長が斬り殺されたら、相手の両頬にキスして差し上げなさい」と。
なんと言っても「メリークリスマス」は「Merry(陽気な)Christ(キリストの)mas(ミサ)」という意味だし。
それによって、ヨノイの心が動かされてしまった。
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