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戦場のメリークリスマスのMTMYのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.5
人間はなんて不器用な生きものなんだろう

信じるもの、すがるもの、
そういうものを頼って、そういうものを、自分たちの人生を歩むための綱にして生きているはずなのに、
どこかそこに盲目的な部分があって、
人はそれに苦しめられながらも
見て見ぬ振りをして生きてこれたりする

人はみな正しいわけじゃない

と、落ちた時に気づく。
それでも人は

誰かが正しくて、誰かが正しくない

と思わないと保てない綱渡りをしている。

とりわけ、未知と遭遇するというファーストコンタクトは
興味と葛藤と残酷さの狭間同士が、従来の価値観と相まってせめぎあう現場そのもののよう

“戦場”という正誤と勝敗を争う場は、
そういう感情のせめぎ合いを醜いものに駆り立て、
本来の 愛 のような 人間の根本的な 対等な温もり を排除してしまおうとする。

せめぎ合い は必ずしも醜いものではなく、
受け入れる ということの不器用な前ぶりだというのに。

ラストでは言語が逆転し、
ハラが英語を喋る。
敗戦国となった日本という状況と相まって、言語的にも英語が使われるというのは
ある意味 、彼らの人間関係性的にも勝敗がついた といっていいと思う。

でもそれは多分完全な優劣が確立した表現ではなくて、
お互いを理解できる環境になった
というプラスな意味での展開だったように思う。

メリークリスマス!

すまなかった でも さようなら でも ありがとう でもなく、あえてこう放たれた言葉には
不思議な引力がのこる。

追伸
作品中でも カマ やホモセクシュアル などしばしば同性愛的要素が語られる作品でもあるけれど、
観た限り、個人的には “人性愛”と名付けて語りたいような印象を受けました。
性別がどうのこうのというより、
優劣や正誤に縛られた究極の環境で、
人は愛を目の前にしてどれほどに不器用になってしまうのか
を観た感じです。
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