ミシンそば

卵のミシンそばのレビュー・感想・評価

(2007年製作の映画)
3.5
前々から観たかったカプランオールの「ユスフ三部作」の最初の一作目。
中年期をスタート地点にして過去へと遡り、一人の人物の核心へと迫っていく構図は、時系列整理が当然簡単ではなくは、あまりに多いメタファー演出も含めて観る者にも頭を使わせることは確実だ。

そもそもこの三部作は、二作目の「ミルク」から発想を飛ばし、枝分かれさせたと言う性格上、三本の映画と言うより総合ランタイム5時間2分の一本の映画として観た方がいいのかもしれない。
登場人物らはユスフが語る作中の過去だったりを知っているんだろうが、当然我々は知らないわけで。
…まぁそう言うのって、続編を観ることで腑に落ちていくものだとも思うが、前述のメタファーの多さや淡々とし過ぎな静かな作風も相まって観る人は結構選ぶ。

続編は枝分かれ元の幹的存在な「ミルク」と、金熊を取った「蜂蜜」と言うから、その点でも立ち位置的に損してるなあ(日本ではそもそも公開のさせ方も悪かったし)。
一個の作品としては、非常に静かではあるけど佳い映画だった。