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卵のRのレビュー・感想・評価

(2007年製作の映画)
3.8
イスタンブールの都市で暮らしているユスフという壮年の男性が、母の訃報を受け、母の住んでいた田舎の故郷へ帰る。そこで、母と数年暮らしていたという遠い親戚の女学生と出会い、ふたりで母の死を弔う。その過程で、自らが厭い、去った故郷と、そして母への忘れていた思慕の情がよみがえる。シンプルなストーリーが、ゆったりした時間の流れに、美しい映像とノスタルジックな自然音にのせて描かれていく。97分、ほとんど感情的な起伏がないにも関わらずなぜか目の離せない不思議な感覚。エリセ監督の作品で覚えた感覚に似ているかも。で、どこかキェシロフスキーを思わせる会話のムード。深い画面の奥行きに浮かび上がる陰翳と色彩。生と死、過ぎゆく年月のさりげない予感とメタファー。なかなかによろしい。オープニングにハッとさせられるよさがあった。
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