むっしゅたいやき

卵のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

(2007年製作の映画)
4.0
セミフ・カプランオール『ユスフ三部作』。
その第一作であり、シリーズの端緒となる作品です。

喪失感に、とても共感出来る作品でした。
私もそうでしたが、親を亡くしても直ぐに悲しみが込み上げて来る訳ではなく、事後処理を熟し、日常に戻って周囲に人が居なくなってから始めて喪失感を得て慟哭出来ました。
事後処理が完了する迄はずっと感情に蓋をし、直視をしない様にしていたのだと思います。
本作の主人公・ユスフも同じく、淡々と相続手続きをし、母の遺した儀式を熟し、そして牧羊犬に絡まれる事で漸く感情を発露する事が出来ています。
根本的に感情表現の苦手な人間の、静かな悲しみとその発露を表した作品なのでしょう。

本作の特徴として、どのショットも構図がきっちり決まっている事が挙げられます。
またパンを用いた長回し、同一ショット内での絞り変更といった家庭用ムービーでよく見られる技法が多用されており、登場人物達との距離を短く、より身近に感じられる様工夫されている事が伺えます。

残念ながら本作は、レビューを拝見すると余り高くは評価されてない様子。
私は好きですけれどねぇ、手渡された卵から伝わる『まっさらな状態から頑張ろう』ってメッセージが。
むっしゅたいやき

むっしゅたいやき